2010年10月16日土曜日

動きの詞(ことば)シリーズ…設く(1)

本シリーズは3回ほどお休みしましたが再開します。
再開最初に取り上げる動詞は「設(ま)く」です。
「設く」の意味は,英語のprepareが非常に近いのではないかと私は思います。
「準備をする」「用意する」という意味ですが,必要なモノが揃う準備だけでなく,心の準備ができているという意味を含む点もprepareと共通点があります。
類義語に「儲(まう)く)」があります。現代の読み方は「もうける」で,「利益を得る」「(子供を)授かる」といった意味で使われています。
しかし,万葉集から推察するに,万葉時代では「儲(まう)く)」は「設(ま)く」と同様に準備するという意味で使われていたようです。
ちゃんと準備をして(儲くして)ものごとを進めれば,その後に良いことが起こり,お宝を得ることができるという経験から,「儲(まう)く)」は「儲(もう)かる」という意味に変化をしていった可能性があると思います。
さて,「設く」に話を戻します。
万葉集では「設く」は「かた設く」という慣用的な使い方がいくつかの和歌で出てきます。
「かた設く」の「かた」はこの場合「大体」という意味で,「かた設く」は「時を待つ。時が近づく,その時になる」といった意味となるようです。
「準備がほぼ整ったので後は心待ちにするだけ」「準備完了で次の段階に達したようだ」という意味に変化ていったのかも知れませんね。

梅の花散り乱ひたる岡びには鴬鳴くも春かた設けて(5-838)
うめのはな ちりまがひたる をかびには うぐひすなくも はるかたまけて
<<梅の花が散りみだれている岡にウグイスが鳴いていますね。待ち遠しい春も近いです>>

鴬の木伝ふ梅のうつろへば桜の花の時かた設けぬ(10-1854)
うぐひすの こづたふうめの うつろへば さくらのはなの ときかたまけぬ
<<ウグイスが木を伝っているウメの花が散り始めるといよいよサクラの花が咲く季節になりますね>>

人は楽しいイベントの準備はいそいそと進めることができます。
その結果,楽しいイベントの日よりずっと前に準備が終わってしまい,待ち遠しくて堪らなくなります。
そんな雰囲気がこの二首の短歌で出てくる「かた設く」の言葉から伝わってきます。

さて,今は景気が停滞し,厳しい世の中だけど,お酒の量も少しずつに我慢して,しばらくは「好景気かた設く」とでも行きますか?

天の川 「たびとはん。10月2日たびとはんがクラブメイトと一緒に呑んだ壱岐の麦焼酎『天の川』やけど。すんまへんな。半分ぐらい残っていたのを全部呑ましてもろたさかい。この焼酎,いつ飲んでも美味いな。」

も~っ! ちょっとしたスキに天の川にまた「天の川」を呑まれてしまった。
まあっ,良いか。「天の川」は成城石井で売っていることが分かったし,今月は珍しく残業代が少し多めに入るから,天の川に見つからないように買って,ゆっくり呑むか?

天の川 「たびとはん。それはアカンやろ! 独り占めはスコイやんか。そんなことしたら大日本アカン警察が逮捕にいくで!」

設く(2)に続く。

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